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■--核実験が地震観測にもたらした変化
++ 島村英紀 (課長)…153回          

   「核実験を検知する米国主導型の世界観測網の地震計 
 |   気象庁の看板施設は…」
 | 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」コラムその135
 └──── (地震学者)

 先週、北朝鮮が4度目の核実験を行った。この核爆発の振動は世界各地の地震計で捉えられた。
 日本の報道では「気象庁が午前10時半ごろ検知した。発生時刻は午前10時29分57秒、震源の位置は北緯41.3度、東経129.1度の北朝鮮北東部」とされている。
 しかしこの報道は間違いだ。気象庁の地震計の能力では、900キロも離れた「地震」の場所や発生時刻をこんな正確に決められるはずはないからである。
 正しくは「気象庁もデータをもらっている米国主導型の世界観測網の地震計の観測によれば」というべきなのだ。
 この世界観測網は米国地質調査所と米国の非営利法人IRISが運営しているもので、世界各地に150地点ほど地震計が置かれて、世界中にリアルタイムで記録を配信している。日本にも2ヶ所の地震観測点がある。なおIRISは全米科学財団が支援して1984年に創設され、世界の100以上の大学が参加している。
 もともとこの世界観測網は各国、とくに社会主義国が秘密裏に行っていた地下核爆発実験を検知するためのものだった。だが、インドやパキスタンや今回の北朝鮮のように、核爆発実験が秘密のものではなく国家の権威を誇示するものに変わってしまった現在は、純粋に学問的なものに変わった。
 世界観測網のうち、今回の核爆発が行われた実験場にいちばん近いのは中国東北部の黒竜江省牡丹江の市街地の北2キロのところに設置されていた地震計だった。約370キロほど北に離れている。
 この牡丹江の地震計の記録では今回の核爆発はマグニチュード(M)5.1相当。過去に行われた核実験と極めて似た記録だった(右の図)。
 爆発の規模は過去3回のうち、前回の2013年2月のものとほぼ同じM5.1だった。その前の2009年5月のときはM4.7だった。今回のは2006年10月の最初の核実験のM4.1よりは30倍ほど爆発エネルギーが大きかった。
 ところで世界観測網の日本にある2ヶ所の1ヶ所は大学のもの、1ヶ所は気象庁の松代(まつしろ)観測所にあるものだ。
 気象庁のものは1983年に作られた「群列地震観測網」を改修したものだ。長野県松代を中心に10キロの範囲に9つの地震計が設置され、データを松代観測所に集めて処理する。群列地震観測網にすることによって感度を高めたり、地震波の進入方向を知ることができる。しかし北朝鮮のように遠い地震では、起きたことは記録されるものの、場所や発生時刻を正確に知ることはできない。進入方向も角度にして数度以上ちがうことがよくある。
 気象庁の主力地震観測所である松代の看板施設で、元来は純粋に科学的な目的のものだった。
 この地震観測網に北朝鮮の核爆発監視のための予算がつき、2007年に4億円をかけて改修した。だが、その後故障続きで、今回も故障していて記録が取れなかった。
 じつは前回の2013年のときにも事前の雷で故障して記録が取れていない。純粋な科学目的でなくなって以来、肝心なときにたびたびの不運に見舞われているのである。
.. 2016年01月18日 08:23   No.1002001

++ 木村雅英 (大学院生)…127回       
免震重要棟を作らないなら直ちに川内原発1,2号機を止めよ
| 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ことを許すな!
 | 原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その80
 └──── (再稼働阻止全国ネットワーク)

 既に稼働中の川内原発1,2号機について、2015年12月17日に九州電力が規制委に設置変更許可申請を出した。
 何とそこで、次のように免震重要棟設置をしないと宣言したのだ。
「川内原子力発電所1、2号機の更なる安全性・信頼性向上への取組みに係る原子炉設置変更許可申請について」において、
≪3.緊急時対策所の変更(1,2号機共用)
当初、「緊急時対策所の機能」と「それをサポートする機能(支援機能)」を持つ「免震重要棟」を設置することとしていた。
 新規制基準で要求される「緊急時対策所の機能」は、現在運用中の「代替緊急時対策所」で満足しており、今回、自主的な取組みとして、支援機能を持つ「耐震支援棟」を同対策所の近傍に設置することとし、「代替緊急時対策所」の名称を「緊急時対策所」へ変更する。≫
 原子力規制委は直ちに川内原発1,2号機の稼働を止めるべきである。
その理由は次の通り。
(理由1)東電福島第一原発事故では、中越沖地震の影響を踏まえて設置された免震重要棟があったので、何とか事故対策ができた。
(理由2)甘すぎる「新規制基準」においても、かろうじて5年猶予を残しながら、「バックアップ施設−原子炉から100mの場所に電源、注水ポンプ、これらの緊急時制御室を常設化(特定重大事故等対処施設)」を要求している。
(実用発電用原子炉に係る新規制基準について
  −概要− こちら
(理由3)免震重要棟設置は、規制委の「設置変更許可」の許可条件である。
 ちなみに、規制委の「九州電力株式会社川内原子力発電所1・2号機の設置変更の許可について」(2014年9月)
  こちら
 にある「審査結果」ファイルには、「免震重要棟」が3回、「緊急時対策所(免震重要棟)」が37回も記述されている。要するに設置変更許可の条件になっているのだ。
(理由4)福島第一原発事故の教訓を風化させてはいけない。
 毎日新聞(1月19日)によれば、全国16原発26基の事故対策拠点「緊急時対策書」について、約半数(7原発15基)で免震構造によって作る当初計画を撤回して免震構造を耐震構造に変更しあり、再検討を進めたりしている、そうだ。
 原子力規制庁は「機能を失わなければ免震、耐震どちらでもかまわない」と説明しているらしい。
(理由5)「安全文化」が皆無
 設置許可の条件を規制委も事業者も回避するとすれば、田中委員長がいう「事業者の安全文化」なんて全くのデタラメであることを証明している。
 ともかく、原子力規制委員会も電力事業者も「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ことを許してはいけない。


.. 2016年01月25日 13:27   No.1002002
++ 島村英紀 (課長)…154回       
地下深くでの震えが大地震を誘発 記者会見で触れられなかったコト
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその136
 └──── (地震学者)

  先週14日、北海道・襟裳岬の西沖でマグニチュード(M)6.7の地震が起きた。北海道南部や東北地方北部で震度5弱だった。
 どこかで震度5弱を超える地震が起きると気象庁では記者会見を開くことになっている。今回の会見では「地震の巣のようなところだから地震はよく起きる」という内容だった。
 たしかに千島海溝と北海道の間では多くの地震が起きる。浦河町で震度6を記録した「浦河沖地震」(1982年、M7.1)もそうだ。千島海溝は太平洋プレートが北米プレートの下に潜り込んでいくところで、日本でいちばん地震が多いところなのである。
 しかし記者会見では触れなかったことがあった。この地震の2日前、北海道西方沖を震源とする「稍(やや)深発地震」が起きていたことだ。Mは6.0。震源の深さは260キロだった。
 この稍深発地震が2日後のM6.7の地震の引き金を引いたのではなかったか、という疑いがある。これは太平洋プレートが潜っていった先で起きた地震だ。
 プレートが潜っていく先で震源が深い稍深発地震やそれ以上に深い深発地震が起きてから、そのプレートの浅いところで大地震が起きた例が多いことが学説では指摘されている。
 たとえば2003年に北海道十勝沖で起きたM8.0の海溝型地震、「2003年十勝沖地震」の2ヶ月前に、同じプレートの深さ500キロ近いところでM7.1の地震が起きた。そのほか13年前には深さ約600キロでM7.2の地震が起きていた。
 また1952年の十勝沖で起きて33人の犠牲者を生んでしまったM8.2の海溝型地震である「1952年十勝沖地震」の2年前、深さ300キロあまりのところでM7.5の地震が先行して起きていた。これ以外にも小さめの深い地震が数年以内に比較的多く起きてからこの浅い1952年十勝沖地震に至ったのだった。
 つまり、深いところで地震が起きると、それによってプレートの「留め金」が外れて、その後に浅い海溝型の大地震が誘発されることがある。時間差は数日以内のこともあり十数年のこともあった。
 ところで東京で震度5弱を記録した2014年5月5日に伊豆大島近海で起きたM6.0、深さ160キロの稍深発地震が、いずれ首都圏の浅い地震に結びつくものかどうか、地震学者は注目している。
 その深発地震の起きた太平洋プレートを海溝の方向に辿(たど)っていったところに首都圏があるからである。
 2015年5月30日にも小笠原近海でM8.1、深さ680キロの深発地震も起きた。首都圏の地震を「窺(うかが)っている」深い地震はひとつではないのだ。

.. 2016年02月03日 08:28   No.1002003
++ 島村英紀 (課長)…155回       
地下深くでの震えが大地震を誘発 記者会見で触れられなかったコト
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその136
 └──── (地震学者)

  先週14日、北海道・襟裳岬の西沖でマグニチュード(M)6.7の地震が起きた。北海道南部や東北地方北部で震度5弱だった。
 どこかで震度5弱を超える地震が起きると気象庁では記者会見を開くことになっている。今回の会見では「地震の巣のようなところだから地震はよく起きる」という内容だった。
 たしかに千島海溝と北海道の間では多くの地震が起きる。浦河町で震度6を記録した「浦河沖地震」(1982年、M7.1)もそうだ。千島海溝は太平洋プレートが北米プレートの下に潜り込んでいくところで、日本でいちばん地震が多いところなのである。
 しかし記者会見では触れなかったことがあった。この地震の2日前、北海道西方沖を震源とする「稍(やや)深発地震」が起きていたことだ。Mは6.0。震源の深さは260キロだった。
 この稍深発地震が2日後のM6.7の地震の引き金を引いたのではなかったか、という疑いがある。これは太平洋プレートが潜っていった先で起きた地震だ。
 プレートが潜っていく先で震源が深い稍深発地震やそれ以上に深い深発地震が起きてから、そのプレートの浅いところで大地震が起きた例が多いことが学説では指摘されている。
 たとえば2003年に北海道十勝沖で起きたM8.0の海溝型地震、「2003年十勝沖地震」の2ヶ月前に、同じプレートの深さ500キロ近いところでM7.1の地震が起きた。そのほか13年前には深さ約600キロでM7.2の地震が起きていた。
 また1952年の十勝沖で起きて33人の犠牲者を生んでしまったM8.2の海溝型地震である「1952年十勝沖地震」の2年前、深さ300キロあまりのところでM7.5の地震が先行して起きていた。これ以外にも小さめの深い地震が数年以内に比較的多く起きてからこの浅い1952年十勝沖地震に至ったのだった。
 つまり、深いところで地震が起きると、それによってプレートの「留め金」が外れて、その後に浅い海溝型の大地震が誘発されることがある。時間差は数日以内のこともあり十数年のこともあった。
 ところで東京で震度5弱を記録した2014年5月5日に伊豆大島近海で起きたM6.0、深さ160キロの稍深発地震が、いずれ首都圏の浅い地震に結びつくものかどうか、地震学者は注目している。
 その深発地震の起きた太平洋プレートを海溝の方向に辿(たど)っていったところに首都圏があるからである。
 2015年5月30日にも小笠原近海でM8.1、深さ680キロの深発地震も起きた。首都圏の地震を「窺(うかが)っている」深い地震はひとつではないのだ。

.. 2016年02月08日 08:15   No.1002004
++ 塩坂邦雄 (幼稚園生)…1回       
新欠陥(2)浜岡原発(静岡県)
 |  巨大防波壁の内側で洪水
 |  溢水防止壁から水が溢れる 想定外!
 └────  (地震、地盤の専門家、工学博士)

防波壁を、強固に高く、長く造って、津波を防いでも、
運転中の浜岡原発が、大丈夫なわけではありません。
日本にある50基以上の原発で、取水塔があるのは浜岡原発だけ。
冷却水を、2階建ての家が入るほどの取水トンネルで、沖合の海から700mほど運んで、取水槽に入れる構造になっています。
東海地震が発生すると、震源の真上に建てられている浜岡原発を、直下から、強烈な揺れが襲い、1.5mほどの隆起が不均衡に起こるので、5基あるトンネルのいくつかが壊れるのを防ぐことは、まずできません。
壊れなかったトンネルからは、津波の海水が、防波壁の内側で湧き出します。
新たな対策として設置された、巨大水槽や、ガスタービン発電機なども、元からある安全設備の大半も、壊れて使えなくなります。
そのため、冷却水がなくなり、原子炉はメルトダウンして爆発します。
放出した放射能は、偏西風で関東に運ばれ、首都圏を消滅させます。

中部電力では、「津波を侵入させない」対策として、「トンネルで海とつながっている取水路から海水を流入させないよう、取水槽の周囲に、高さ4mの溢水防止壁を設置」と対策をホームページで披露しています。
海抜22mになるような津波には14〜16mの防波壁が必要で、そこまで海水が来たら、取水槽の水面は上がって防止壁から水が溢れ、敷地内は洪水になります。
洪水を起こした水は、巨大防波壁があるため、海に出て行くことができません。

   (『食品と暮らしの安全』No322 2016.2より許可を得て転載)



.. 2016年02月09日 10:01   No.1002005
++ 島村英紀 (課長)…156回       
東京で相次ぐ地鳴りの報告 地震の前兆? 飛行機の音?
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその137
 └──── (地震学者)

  この正月以来、東京都内で地鳴りが聞こえたという情報が毎日のように報告されている。多いのは目黒区、渋谷区、世田谷区など東京23区の南部だ。
 いままで地震が起きたことがない東京湾北部で去年12月末、午後10時すぎから約1時間の間に有感地震が5回起きた。このときも地鳴りが聞こえたという。今回も地震関連の地鳴りではないかという不安が高まっている。
 しかし、いまのところ地鳴りの原因は分からない。飛行機の音ではないかという説もある。
 たしかに、上空の気温の分布が空気中の音速の分布に影響して、ある場所に遠くの音が集中して聞こえることがある。げんに、昨年9月に大きな爆発音が鹿児島県・徳之島や沖永良部島、奄美大島で相次いだときも、地震や火山噴火ではなかった。
 多くの異音報告を聞いて警察があわてて調べたが島内に被害はなく、上空を北から南に飛んだ飛行機が起こした「ソニックブーム」だったのではないかと思われている。ソニックブームとは、戦闘機などが音速を超えたときに衝撃波が発生して大音響が生じる現象だ。
 ところで、地震による地鳴りは昔から数多く報告されている。
 地震の震源からはさまざまな周波数の振動が出る。周期の長いほうは大津波を生んだり、高層ビルを共鳴させるような数秒以上の振動もある。他方、周期の短い方では数十ヘルツから百ヘルツを超えるほどの高い周波数の振動が出ることもある。
 地震の振動はスピーカーの振動板のように地面を揺らせるものだから、約20ヘルツを超えるものは空気中を伝わって耳に聞こえることも多い。腹に響く振動を人体で感じることもある。一度聞いたら忘れられないほど恐怖心をあおる音だ。
 しかし、こういった高い周波数の振動は地下での減衰が大きいので、震源が浅い地震しか地鳴りを伴わない。また、地下構造や地形によって、地鳴りの聞こえやすい所と、まったく聞こえない所とがある。
 茨城県・筑波(つくば)山付近は、よく地鳴りが聞こえることで有名である。この付近では、地震のたびにほとんど地鳴りが聞こえる。これは、普通は地下に隠れている基盤岩が地上に顔を出しているためだ。
 これに対して東京近辺などでは堆積物が厚くて基盤岩から遠いので、地震の地鳴りは聞こえないのがふつうだ。
 だが、身体に感じないほど小さい地震でも、音だけが聞こえることがある。大都会では、たとえ地震が起きて地鳴りがあっても地震計では捉えられていないこともある。地震観測しようにも雑音レベルが高いからだ。
 ところで大地震のときには、各地で地鳴りを感じたという報告が多い。しかし、これは建物や構造物がきしんだり、瓦(かわら)や家具が揺れたりする音であることが多い。
 さて、最近の東京の地鳴りはなんなのだろう。複数のマイクで捉え、それぞれ正確な時刻が記録されていれば、「震源」の方角や位置、そして正体が分かるのだが・・。


.. 2016年02月10日 10:34   No.1002006
++ 島村英紀 (課長)…157回       
太陽系9番目の惑星と地球で起きる「事件」
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその138
 └──── (地震学者)

  約10年ぶりのことだ。先月20日すぎから今月20日ごろまで、夜明け前の空に5つの惑星が同時に見える。水星、金星、火星、木星、土星だ。夜明けから45分ほど前に始まって、空が明るくなると見えなくなる短時間の天空ショーだ。
 金星は東の空。いちばん明るい星なので見つけやすい。金星に次ぐ明るさを持つ木星は南西の空に見える。
 火星は金星と木星の中間あたりに見える。赤っぽいのが目印だ。土星は火星と金星の間に見つかるはずだ。
 水星は地球よりもずっと太陽に近い軌道を回っているために、いつも太陽の近くにあって見えにくい。だが、金星とまだ地平線より下にある太陽の間に見えるはずだ。
 ところで、プロの天文学者が近頃、興奮しているのは太陽系の9番目の惑星が「まだ見えないけれども予測された」ことだ。観測に成功すれば天文学的には今世紀最大の発見になる。
 学校で習った「水金地火木土天海冥」という太陽系の惑星9つのうち、冥王星が惑星から格下げになった。2006年の国際天文学連合の総会のことだ。
 かつては冥王星の大きさはずっと大きいと思われていた。だが近年、月よりも小さいことが分かった。だめ押しは2005年に発見されて「エリス」と名づけられた小さな天体が冥王星よりも大きいことが分かったことだった。
 そのため、冥王星はエリスやもう少し小さめの天体と一緒に「準惑星」として扱われることになった。
 しかし、今回予測された9番目の惑星はずっと大きい。地球の10倍もの重さがある。冥王星よりもはるかに大きい。
 海王星の外側で「エッジワース・カイパーベルト」という準惑星がいくつもあるところがある。そこの準惑星6つの動きがどうもへんなので、この9番目の惑星の強い引力の影響であることがはじめて分かったのである。
 この惑星は、太陽からの距離が地球の200倍以上遠くて、太陽のまわりを一周するのに1〜2万年ほどかかると思われている。
 惑星は太陽などの恒星とちがって自分で光るわけではない。太陽の光に照らされて見えるだけだから、この星の明るさは冥王星の1/10000にもならないと考えられている。それゆえ、この惑星はもちろん肉眼では見えず、望遠鏡でも見えていない。惑星の存在は「あるはず」というものだ。
 この9番目の惑星を見つける競争が各国で始まっている。見えたら名前がつくだろう。
 9番目の惑星の公転の一回前は、日本では縄文時代より前だった。それからいままでに、地球には多くの大地震や巨大な噴火や、そして多くの戦争や原発事故なども起きた。この9番目の惑星がもう一回公転する間に、地球ではどんな「事件」が起きているのだろう

.. 2016年02月15日 08:18   No.1002007
++ 島村英紀 (課長)…158回       
台湾南部の地震は「対岸の火事」ではない
 |  南海トラフ地震起こすプレートと同じ構図
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその139
 └──── (地震学者)

  台湾南部で起きたマグニチュード(M)6.4の大地震から10日あまりがたった。
 16階建てのマンションが根こそぎ横倒しになって、このマンションだけで死者114人を数えた。台湾はこの地震の日から旧正月前後の春節の休暇に入っていた。このマンションも居住者以外に家族や親戚が集まっていたので犠牲者が多かった。
 台湾はフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでいる。このため過去たびたび大地震が台湾を襲ってきた。
 1999年には台湾中部でM7.7の「集集大地震」が発生して、2400人以上が死亡した。南投県・集集鎮付近では震度7だったと思われている。
 この大地震のあと、台湾では建築基準が強化された。だが、今回倒れてしまったマンションはその強化の前、1994年に作られたものだった。
 そのうえ、建築のときの手抜きがあったのではないかと言われている。鉄筋の本数が少なかったり、コンクリートの柱の中から、多数の空き缶が出てきたりしたからだ。
 震源は台湾南部の高雄市で、震源の深さは10キロメートルあまりと浅かったために局地的な震度が大きかった。このため、高雄市の隣にある台南市で少なくとも7つのビルが倒壊した。
 震度は雲林県で震度6、台南市で震度5を記録したとされている。本当に台南市で震度5だったなら、ふつうはマンションは倒れない。やはり手抜きだったのだろうか。
 台湾で使われている震度階は日本と同じものだ。これは戦前の植民地時代に日本式のものを導入したからだ。
  しかし厳密に言えば台湾のいまの震度階は日本のものと違う。それは、日本では1996年から震度5と震度6のそれぞれを強弱ふたつに分けて、震度0から震度7まで全体を10段階にしたためだ。台湾の震度階は、いわば「日本の昔の」震度階なのである。いま植民地でもない台湾に、新しい日本の震度階をまさか強制するわけにはいかなかったのだろう。
 世界のほかの国ではすべて12段階の国際的なスケールになっている。前にこの連載で書いたように、韓国では2001年に日本式の震度をやめ、国際的な12段階のものに変更した。台湾と同じくかつての植民地だった韓国は日本風の震度を「押しつけられた」と感じたのだろう。
  ところで、台湾でたびたび大地震を起こしているプレートの構図は琉球列島から四国・九州、そして東海地方まで続いている。同じフィリピン海プレートが同じユーラシアプレートの下に潜り込んでいるのである。恐れられている南海トラフ地震もこの構図が起こす。
 じつは阪神淡路大震災(1995年)でも手抜きが明らかになった。地震で倒壊したビルでコンクリートの柱の中から廃材や空き缶が見つかったのだ。関西には限らない。地中杭が短いマンションも大地震が来てみないと安全かどうか分からない。
 日本にとっては、この台湾の大地震は「対岸の火事」ではなくて「明日は我が身」かもしれないのである。

.. 2016年02月25日 08:34   No.1002008
++ 島村英紀 (課長)…159回       
群発地震が示すマグマの動き
 |  89年の海底噴火の「次」は陸上の可能性も」
 |  「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」コラムその140
 └──── (地震学者)

 新聞にベタ記事というものがある。一段のごく小さな記事だ。しかし、人によってはドキリとする。先日、地球物理学者がドキリとするベタ記事があった。
 それは、さる1月23日早朝に静岡・熱海で震度3を記録した地震だった。震源は熱海の南の海底、つまり伊豆半島東方沖だ。マグニチュード(M)は3.3だった。小さな地震が続いた群発地震のひとつだった。地球物理学者は、大規模な群発地震がまた始まるのではないかと心配したのである。
 伊豆半島東方沖は群発地震がよく起きるところだ。群発地震は1978年以来,20年間に37回も起きた。
 ここの群発地震にはさまざまなスケールのものがあり、大きなものは数十日のあいだに10000回以上の地震が起きた。このときには有感地震も数百回あった。
 群発地震が起きやすい場所がある。1965年から1970年にかけて起きた長野県・松代(まつしろ)や、1975年から1976年に起きた宮崎県・霧島山周辺や、1978年に起きた北海道・函館周辺や、1992年の沖縄県・西表(いりおもて)島周辺や、1998年の岐阜県・飛騨地方などだ。それぞれかなりの騒ぎになった。
 地下で地震を起こす岩にはいろいろな性質のものがあり、群発地震を起こすところは「松ヤニ」にたとえられる。力を加えられた松ヤニは、ピチピチと音を立てながら徐々に曲がっていく。これが群発地震なのである
 他方、ガラスのような性質を持つ岩もある。曲げていくと松ヤニとは違って、一挙に割れる。こういう岩のところでは群発地震は起きない。
 群発地震を起こすメカニズムで分かってきたことがある。その多くは地下から上がってきたマグマが原因だったことだ。
 松代も函館も、地下からマグマが上がってきて群発地震が起きたが、最終的にはマグマは地下で「凍りついて」くれた。それで群発地震も終わり、新しい火山が地表に誕生することもなかった。
 この連載で前に書いたように、1989年に静岡県・伊東のすぐ沖で海底噴火が起きて「手石(ていし)海丘」が作られた。群発地震が続いたあと、マグマが海底を突き破って出てきたのだ。
 伊豆半島東方沖から陸上にかけては「単成(たんせい)火山」が多い。伊東市にある大室(おおむろ)山が典型だが、富士山のようにひとつの火山が何度も噴火を繰り返すのではなくて、一回だけ噴火して火山を作るものだ。これらの単成火山ができるときには群発地震があったことがわかっている。
 1989年の伊東沖でも、激しい群発地震のあと火山性微動が続き、新しい火山が出てきたのだ。
 ところで、かつて作られた単成火山はいくつかずつ列状に並んでいて、次々に作られていったことが分かっている。
 だが手石海丘は、まだ「その後」がない。同じような群発地震をともなった噴火が、今後またあるのではないかと注目されているのだ。
 1月の熱海沖の地震は手石海丘の「その後」になるのでは、と地球物理学者は心配したのである。今度は陸上で噴火しないとはかぎらない。
   

.. 2016年03月09日 10:13   No.1002009
++ 塩坂邦雄 (幼稚園生)…2回       
首都直下地震の前兆
 |  関東で多発する地震について 塩坂博士に聞く
 └──── 「食品と暮らしの安全」No.323(2016.3.1発行)より転載

 立て続けに起きた関東地方の地震、桜島の噴火、霧島連山でも噴火の兆候、
 台湾でも地震が起き、欠陥ビルが倒壊して130人を超える死者が。
 東日本大震災を的中させた塩坂博士に、首都直下地震について伺うと。

―このところのニュースに、首都直下地震が心配です。
塩坂 3.11以降、日本列島の地殻がバランスを取ろうとして、各地で地震、火山活動が活発化しています。桜島の噴火も台湾の地震も、関東近辺で起きてきた数多くの地震も、プレート間の力を調整するための動きです。
 7日(※)の朝、夜と起きた茨城県の地震も、すべり残りの関東平野の三角地帯で予想通りの破壊が進行していることの証明になります。

―では、それほど心配ありませんか?
塩坂 そうではありません。5日(※)に起きた神奈川の地震は、首都直下型地震の前兆で、銚子―前橋を結ぶ線上で右横ずれ断層が発生することが予想されます。
 銚子―前橋と富士川断層に挟まれた関東盆地の三角地帯は、今まで、動きたくても動けず、残っているのですが、動いたら、首都直下型地震です。
 以前から危惧してきた関東平野の三角地帯では、年間の地殻変動を示すベクトル(矢印)が、渦のように回っています。
 このベクトルの渦が示すのは、関東盆地が乗る3枚のプレート―北米プレート、そこに、くさびのように入りこんでいるフィリピン海プレート、その下にある太平洋プレートのせめぎあいです。
 地下の震源断層が、ずるずると北西方向と南東方向に動いているので、関東平野でベクトルは渦になっているのです。これが、大きく動いたときに大地震となります。
 私はベクトルの変化を監視していますから、危なくなりそうならお知らせします。東京オリンピックのころが心配です。

―遠くない時期に関東で大地震。心積もりが必要ですね。

☆塩坂邦雄氏
 工学博士、特別上級技術者(土木学会・環境)
 東海地震を予知するために、富士川断層の挙動をレーザーを使って観測。
 2010年には台湾・第四原発の近くで活断層を発見し、目前にした営業運転を停止させた。

.. 2016年03月10日 08:22   No.1002010


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