|
この1,2年で随分大きなニュースに何度もなっているISIS、いわゆるイスラム国。イマイチどういう組織なのかイメージばっかり先行して判断しかねていたので、その専門書を買ってみました。池内恵著、『イスラーム国の衝撃』の感想です。 シリアやイラクでヒャッハーやってる、欧米人戦闘員が現地で捕えた外国人を処刑する映像をネットに配信する野蛮なゲリラ組織程度のイメージで、色々とよくわからんのです。そんな自分にとって、経歴、特徴、方向性など解説してくれる本書は実際たすかります。ニュース等で見聞きするイメージにより、過大評価してしまっているのか? それとも、実際に深刻なレベルの脅威として日本人にも関係してくるのか? それを判断するのは大事でしょうね。
さて、ISILの成り立ちですが… 今までも沢山のイスラム過激派組織が存在しているけど、ISILのように領域支配をし、国家を宣言するほどの規模の組織はそう無かったわけで、その点がISILの存在感を大きくしてるのではないでしょうか。米主導のイラク・フセイン政権の打倒や、アラブの春による各国の独裁政権の崩壊、シリア・アサド政権の弱体化。これらの結果中東に何が起こったかというと、ツイッター上でアラブの春を無血革命だなどと喜んでいた人達の幻想とは違い、空白地帯を生み出したわけです。空白地帯ってのはつまり、国家による治安維持が及んでいない無法地帯です。その空白地帯はまさに力こそ正義なヒャッハーな世界。過激派組織がそこに流れ込み、実効支配を行う。その範囲こそがISILの勢力圏となって、領域国家っぽくなったわけだ。これって1990年代アフガニスタンのタリバン政権誕生と似た流れがありますね。独裁者が居た頃の方が治安は良かったんでしょう。ただし、それは抑圧によるモノ。その不満はいずれ爆発するわけで、そのきっかけがアラブの春やNATO諸国の内政干渉だっただけの話。独裁者が居た方が良かった、ってのは端から見るとその通りなんでしょうね。蓋みたいなもんだから。蓋が開いて色んなものが周辺各国にまで広がって迷惑。でも、蓋の内側で何が起こっていたかが問題なわけで。ある意味、時間の問題でしか無かったかと。
.. 2015年05月08日 11:17 No.830001
|