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■--「日本は勝てる戦争になぜ負けたのか」感想
++ 多足          

「第二次世界大戦で、こう戦えば日本は勝てた」的なスレはしばしば目にするし、その内容たるやもう馬鹿馬鹿しいまでに独りよがりの考察、思い込み、視野の狭さで呆れるばかりのものが多いですよね。
この本も、そういった「狭い視野で自分の都合の良いように捻じ曲げた歴史考察」なのだろうか? いや、今更こういう本にまとめるくらいだから、もっと深い考察なのかもしれない。或いは逆説的な皮肉めいたタイトルなのかも…? と思い買ってみました。
でまあ、結論から言えば「狭い視野で自分の都合の良いように捻じ曲げた歴史考察」の域をそこまで出てないな、という感じ。しかし見るべき部分、同意できる部分もあります。

大筋として、
@日本兵は強かった、けども上層部がアホ過ぎて、わざわざ困難な戦いに進む選択ばかりしてた
A真珠湾攻撃なんかせずにインド洋で英国を締め上げ、中国に深入りせずソ連を討てば日独の挟み撃ちで英ソは負けてた
B米国が参戦してきても防御専念の漸減戦術と大和型で米艦隊を完封できる
Cそうならなかったのはスターリンとチャーチルの謀略のせい
Dアジア解放の大義を掲げれば悪者は西欧なんだから勝てる

とまあ、こんな塩梅。
.. 2015年02月19日 09:40   No.828001

++ 多足       
@まあ同意。日本兵の練度の高さは疑わないけども、条件付きではある。基礎工業力の不足からくる国内インフラのレベルから、やっぱ最新機械の取り扱いに関して英米独に劣る面があるだろう。なんせ車の普及率考えるともう、ね。日常生活で扱う機械のレベルが全然違うから、基礎訓練に影響があるだろう。戦場の機械化が進む中でそれはだいぶ厳しいねえ。

Aまったく同意しかねる。たしかにインド洋抑えられたら英国はかなり厳しいだろう。しかしそれをやる兵站能力が日本にあるのか? 実際のインド洋作戦の結果からか、日本人は英軍を甘く見るきらいがある。しかし英国の強さは個々の戦闘では見えてこない。戦略的な粘り強さ、政治的な汚さ、というもので「どうすれば戦争に勝てるか?」の判断力が尋常じゃ無い。
この挟み撃ち案は英ソを過小評価し、日独の特に兵站面を過大評価していて色々無理がある。ifとしては面白いけどね。

B論外。漸減戦術自体はそう悪くは無いかもしらんけど、根本問題として何時何処を攻めるかという決定権が米側にある、ということ。待つ側の日本はどこに艦隊を展開し漸減を始めればいいのか、賭けに近いものがある。日本海海戦のときほど条件の絞り込みは容易では無いぞ。
また、大和型のアウトレンジで米艦隊を壊滅できる、って考え方は甘過ぎる。遠距離砲撃なんて当たらないの。そもそも数が多い。1隻狙ってる間に他の艦が接近してくるわ。ジェトランド沖海戦の記録とか見たら無傷の勝利が無理、ってのがよくわかるってものです。戦艦同士の砲撃戦ってのは、互いに出血し合いながら続ける死へのチキンレースなんだから。
あと米潜水艦の史実での跳梁を考えると、日本が待ってる間にかなりの出血を強いられるだろうね。なんせ史実でも42年の段階で日本近海での米潜水艦による船舶被害が出てるんだから。ってかオレンジプランに全く触れてないのもなんとも… 米国が参戦しないだろうって根拠も、モンロー主義への過度の期待に過ぎない。虫が良すぎるわ。

.. 2015年02月19日 09:42   No.828002
++ 多足       
Cそこそこ同意できるけどちょっと言い過ぎ、直観的過ぎる。スターリンもチャーチルも、戦争に勝つために物凄く汚くなれる、ある意味理想的な戦争指導者ではあるけどそこまで万能では無いぞw
ちょっとこの件は話がくどくなり過ぎてて、読んでて「はいはいアカのせい、アカのせい」って感じになる。某航空幕僚長の論文思い出したわ。

Dそこそこ同意できる。けども植民地解放を掲げるだけで勝ち続けられるほど簡単な話ではない。「解放者」も、数年も経たずに「別の支配者」でしかなくなってしまうからね。日本にその辺巧くできるほどのバランス感覚があるか? ってか資源、食糧ともに不足してる日本軍に、そんなバランス維持できる余裕があるのか? って話です。

また、軍の指導者に対する論評も偏りが激しい感じがしますね。山口多聞、山下奉文、阿南惟幾を持ち上げ、山本五十六、井上成美、南雲忠一を批判するのも、結局筆者好みの行動を取った人物をその一面だけで高く評価し、そうでない人物を自説に副わないから非難してる。結果論で「あの時こうしていれば…」になるのは仕方ないんだけど、人物評価を行う上で断片的にものを考え過ぎなんじゃないかな。栗田ターンの件を持ち出すあたり、そのきらいが強いかなあ。

.. 2015年02月19日 09:42   No.828003
++ 多足       
また、官僚主義的な人事の硬直性を非難するのは結構なんだけど、ちょっと「官僚」というものを「いくらでも叩いても良い便利な言葉」として使ってる感も強い。巨大な組織を運用する上で必要なシステムでしょ、官僚ってのは。それをなんでもかんでも「官僚的なのが悪い、それは今の日本にも通じる」で片づけるのはちょっと。柔軟性が必要なのも認めるけど、それって結局バランスの問題ですからねー。
敗戦革命とそれを引きずる負け犬根性が今の日本の根本問題だ、という話もまあ、そこそこ同意は出来ますが、ひっかかる点も多いです。結局、個人主義を是とするか、全体主義を是とするか。これもバランスの問題だもの。今の日本人の、行き過ぎた個人主義による社会の歪みってのは確かに非難されるべき面が多いでしょう。領土問題、経済問題を含めて他国と争う際、個人主義が全面に出ると脆弱になる、ってのもわかるんだけど極端なのも、ね。結局今の日本人の問題点ってのは、道徳観が揺らいでいる中での個人主義の進行だろうからねえ。こういう時、宗教ってのもそう悪くないって思えてくるね。

話が脱線していくので総評として。
筆者が今の日本社会に対して抱く不満、危機感は正当な物だと思います。その原因が敗戦と、戦争に正しく向き合わず、それどころか太平洋戦争を多角的な視点で検証すること自体を悪とする世情が非常によろしくない、ってのも全くその通りだと思います。が、まあ、その思いがちょっと暴走気味になっちゃってるな、と感じる本でした。オススメできるかどうかは難しいところ。多角的な視点で自分で判断するのに慣れてない人が読むと、自分好みの部分ばかり吸収して変な形で鵜呑みにしてしまいそうだから。
ってか冒頭に「引用書籍や記事は色々あるから列記するの止めました。あとネットの書き込みとかからも結構引用してるんでその点よろしく」ってあるんだから、そういうモノなんだよ、って理解しておく必要はありますね…

.. 2015年02月19日 09:43   No.828004
++ つかじ       
>1
その前に国内の政治状況の方が大切な気が。

>2
いやいやw東南アジア駐留英国軍並びに東洋艦隊を十分過ぎるほど警戒してましたよね?
日本軍、セイロンから根拠地移動したの知りませんでしたよね?英国と戦端開いた時点で米国も自動参戦ですよね?

>3
正直妄想乙レベルw
仰る通り潜水艦の存在忘れてるし、待ってる間に米国は新造艦の建造に入ってるよきっと。

>4
もうここまで来ると「天狗のしわざじゃー」ってのと変わりませんねw確かに政治的・軍事的に英ソの連携はあったけど、基本英からソへの物資中心だし。ここでも米国の存在忘れてる。

>5
前も持論言いましたが、「日本がアジア開放を行わなければならない根拠は何処?」ってのが無い。そもそも、その土地の指導者達が日本に全面的に要請したのかの証拠も事実も無い。

.. 2015年03月22日 21:31   No.828005
++ つかじ       
>軍人評
阿南さんって「何故か」天皇からの信頼もあったみたいだけど指揮官としての能力は疑問だなぁ。
実際この人中国戦線で独断専行で作戦失敗やらかしてるし。

南雲さんは、まぁ個人的には「典型的な(政治介入へ)出過ぎた軍人」ではあるけど、「硬直した人事の被害者」って感じだな。水雷戦隊でも率いていれば活躍したと思ってる。他は略で。

>総評
自分は直接読んではいないから、見たまんまの感想でしかありません。ですが、どう見ても読んでみたいとは思わない本ですね。敬称ならしたいのなら他に書き様はある筈ですから。

.. 2015年03月22日 21:46   No.828006
++ 多足       
実際、つかじさんくらいのレベルで色々史料を読んで今まで考えてきた人にとっては、読む必要の全く無い本と言えるでしょうね。
逆に、若い世代で太平洋戦争での日本悪玉論に疑問持った人がこれ読むと、いらん影響を受けて単純な思考に陥ってしまいかねないものでもあります。都合の良い部分だけ切り取って自己正当化する材料にしかねない。
じゃあどの層にオススメかってーと、どの層にもオススメできませんw

.. 2015年03月24日 08:48   No.828007
++ つかじ       
>漢字間違い
「敬称」=「警鐘」ですね。
最近感じるのですが、7にしてから漢字変換がやたらと変な字になる。個別に登録しても追い付かないくらいに、元がしっかりされてない。
まぁ自分も変換時に良く見ないのも悪いけどさ。
「何故この程度の漢字が出ない」とか「このソフト前後の言葉も理解できないのか?」とか。

>最近感じる事
以前もレジームの件でお話しましたが、今の風潮はよろしく無いと感じています。そこへ来てこの手の本の発売も多くなってきたと感じます。
確かに多足さんの指摘する「余り知らなかった人用のこの手の本」は非常に危険だと感じます。

ミリ系・歴史系に関わった年季と云うよりは、「知らないから吸収し易くなってしまっている」、「中韓の反日反動の反発からくる極端な傾向」でもあると思います。

それにこれも感じるのですが、ここ10年前後で各資料も格段に中身が変わりましたね。
ある意味より詳しく掲載とも言えるし、神経質と言って良い程細かくなったとも言える。

>オススメできませんw
でしょうね(爆)
でも、多足さんへ好感が持てるのは「地雷だろうな」と云う本でも、ちゃんと読んでから判断した所ですよ。これ、結構大事だと思う。

.. 2015年03月24日 19:06   No.828008
++ 多足       
ちょっとレビュー見てると、この本の評価って二分されてるんですよね。ってか、高い評価が結構見受けられる。これって、「あの戦争に日本は勝てた」「日本は間違ってなかった」という風に信じたい人たちが、その願望の裏付けとしてこの本を高く評価してるんだと思うんですよ。これは非常に危うい話です。

まあ、いつまでたってもこういう話が出続けるもんで、ちょっと改めてその論拠を知りたいなと思って買った次第ですw

.. 2015年03月27日 10:42   No.828009
++ つかじ       
最近知り合った中国人が、湖南省長沙から来たと言ったのですよ。内心凄く焦りましたね。「何か言われるんじゃないか?」って本気で(汗)

先に書いた阿南さんの独断専行は、この第2次長沙作戦ですから(第1次も指揮官だったけど)。

こちらも言う積りは無かったし、そのままにしたのだけど、やっぱり「何が起きた事を知ってる人間」からすると、古戦場出身者は内心怖い。
ま・普通に明るい良い人だったけどねw

.. 2015年03月28日 13:11   No.828010
++ 多足       
古戦場出身かあ、たしかにドキっとしますね。なんか色々教えられてそう、ってイメージはありますねえ。実際色々あった場所だから。でも完全にイメージ先行なのかもしれません。
こちらも、去年海外からの視察団を受け入れたことがあったんですが… 参加者名簿見てたらセルビアとボスニア・ヘルツェゴビナの人が居たり、インドネシアと東ティモールの人が居たりでどうなんだろうとちょっと不安、というか興味深かったです。昼飯を公園で食べたんだけど、自然と分かれるグループ見てると、同じグループに居なかったのは偶然なのかはたまた…

.. 2015年04月01日 08:47   No.828011


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