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■--『銃・病原菌・鉄』感想
++ 多足          

文明がどうの、アフリカの現状がどうのってスレでしばしばタイトルを目にし、気になってた本、
ジャレド・ダイアモンド著『銃、病原菌、鉄』を読みました。その感想的な。
人類が世界中に拡散した1万4千年前。そこから各地で文明が進化し、現在に至るわけですが、
地域による格差が激しい。その原因は何なのか? というものを考察した本です。
要約すると、その格差は地理的条件に恵まれた偶然によるもの、という話。19〜20世紀くらいの、欧米による植民地政策真っ盛りの時代。いや、もっと前からかな、白人が有色人種を支配するという案件が非常に多いです。アフリカ、オーストラリア、東南アジア、中南米で「未開な」有色人種を白人が支配する。では、なぜその逆ではなかったのか? なぜ中南米の有色人種が、欧州の白人を支配し、欧州を植民地化しなかったのか?
これに対して、白人が人種的に優れているから、ってのが20世紀までの常識だった。まあ、あくまでも欧州の常識、ですが。この時代の某作家の小説なんか読んでると、明確に有色人種を劣等人種だと考えてる描写が目立つ。でもこれって「差別意識」とはちょっと違うんですよね。この当時の「科学的事実」が、有色人種の劣等性を支持している。差別とか好き嫌いとかでなく、科学的事実として人種による差があるから仕方ないよね、という姿勢です。違う生物を見る目ですね。そしてこの意識は今でもかなり尾を引いてると言えるでしょうね。
なぜアフリカはいつまでたっても紛争と虐殺繰り返してるの? なぜなら彼らは劣等種族だから、ものを作るってことが出来ない。だから農業も成り立たない。…こういう意見は今でも結構聞きます。が、おおっぴらには言えないよねw

.. 2014年05月02日 11:01   No.817001

++ 多足       
さて、本書ではそうした遺伝的、人種的な優劣によって文明の格差ができた、という説をまっこうから否定してます。要約すると、その人種が住んでる大陸の性質によって発展しやすさ、人口の増えやすさが違ってくる。結果、人口が多いことで多様性に富んだ文明がより発展して他の文明を併呑、もしくは破滅させていったということ。
一つは、農作に適した植物があったかどうか。
一つは、家畜化するのに適した生物がいたかどうか。
そしてその土地が南北に広いか、東西にひろいのか。
農作が伝播する上で、陸地が東西に広いと素早く伝播します。そりゃそうだ、同緯度だと日照時間が変わらないから、気候条件も似たところが多い。同じ種の植物育てることが出来る。これが南北方向だとえらい違い。ちょっと北上するだけで気候が変わるから、違う種を探さないといけない。
東西方向には交流が進みやすいけど、南北方向は難しい、という話。
で、農耕が進めば余剰食糧が生まれ、人口が増え、仕事が多様化、専門化し、多様性が生まれる。他の集落、都市、国家との交流によりその多様性はさらに増す。発明は多様性の中で生まれ、受け入れられる。
考えてみたら、アレクサンダー大王もローマ帝国もモンゴル帝国も、基本東西方向だよね。
ようするに、東西方向に広いユーラシア大陸は文明が発達し易く、南北方向に長いアフリカ大陸、アメリカ大陸はその発達が遅い、というお話。その結果、数千年のアドバンテージを得たユーラシア大陸の連中が、長距離航海技術とそれを支える経済、政治体制を確立させ、ゆっくりと発展中だった南北アメリカ大陸、アフリカ大陸を征した、ということ。
人種的な優劣は関係ないというお話。この辺の実例を示す話が沢山紹介されてます。色々印象的な話があるけど、挙げだしたらキリが無いのでw

.. 2014年05月02日 11:02   No.817002
++ 多足       
現在、世界中で富の格差がものすごいことになっていますが、その差が生まれた原因は、人種的な優劣とは関係ない、という話。あくまでも数千年をかけた偶然の結果、です。

…さてこの結論なんですが、人権というものが世界的に尊重される流れが重要となっている20世紀後半から21世紀に至る現在において、とても支持されやすい内容だと思います。実際そうなんでしょう、証拠と実例の列挙による説得力が十分ある話なので。
逆に、有色人種は白人より劣っているという「科学的事実」は、19世紀という当時において実に支持されやすいものであった、とも言えます。植民地支配とそれに伴う搾取を、科学的知見から正当化できる内容だからです。
もし、仮に、本当にある人種が他の人種より劣等、もしくは優れているということが科学的に証明されたとしたら…? その「科学的事実」は、現代社会では広く受け入れられることはないでしょうねえ。学会的にも外聞が悪いし、専門化でもない人々から散々叩かれ、これたま専門化でもない、自分にとって都合のいい国粋主義者によって祭り上げられるでしょう。
科学的事実が受け入れられるか否か。それは社会の様相に大きく影響されることです。

じゃあ自分自身はこの本で示されてる通り、人種的優劣は関係ないと信じてるかってーとどうなんでしょうね。どの地域が未開だ、原始的だって話に関して、自分の好みにあったネット上のコピペを鵜呑みにして人種の優劣を決めつける人たちの主張よりは、実際にニューギニアやアフリカで何年も現地人の生活を見てきた著者の言い分のほうが説得力は感じますw
著者が見ている期間と、現状から判断してる人たちが見てる期間が全然違うってのもあるしなあ。数世代の様子を見て「こいつらダメだ」って見るのに対して、著者が見てる期間ってのは数世紀の話だからなあ。社会全体の進歩、変化には本当に時間がかかるよね。

とにかく、現代の世相に合致した、かつ、非常に説得力のある内容の本でした。基礎知識が結構必要なので、自分の理解が追い付いてない面が多々ありますがw

.. 2014年05月02日 11:03   No.817003
++ つかじ       
お久しぶりです。最近忙しかったり、風邪引いて体調が悪かったりで全くネットを楽しめなかったです。

さて、大変興味深い内容の本のようですね?ざっとスレを拝見しましたが、確かに人種や歴史の予備知識が多少なりとも必要な本だな、との印象を受けました。

ただ、個人的もしくは大体の人が思い描く俗に言われている「発展途上国は何時になったら、先進国並みに発展するのか?」、「何時まで支援を受け続けるのか?」と言う疑問の解決の一端は見えた気がしますよ。

でも、やはり当人達のやる気・本気度なども重要だよねぇ。どっかの人達のように「支援受けたことを隠したり、無かったことにしたり」。

.. 2014年06月05日 14:05   No.817004
++ つかじ       
あ・間違って投稿してしまった。続きです。

後、凄く疑問も同時にあるのですよ。アフリカ・中南米などでも、非常に優れた文明や国家はあったのに、どうして「そこで途切れてしまった」のか?

外敵から身を守れた実績や逆に出て行った部分もある筈なのに、結果だけ見れば「白人社会」が優位になってた。それが本当に地理的要因だけだったのか?やはり国の歴史ってのは一筋縄では行きませんね。

>追伸
最近、例のチーズケーキ。開け易くなったと思う。少なくても、途中で千切れたり変に剥ける風にはならない。

.. 2014年06月05日 14:09   No.817005
++ 多足       
特に紛争頻発な発展途上国に関しては、この本の趣旨から考えるなら「いつまでたっても戦争してて、支援しても実らない」てのは、当人たちが愚かだからではなく、育った社会がそうだから、って感じですね。数十年のスパンでは社会構造、風習が変わらないってことです。
例えば今のソマリアに欧米人の子供を送り込んだとしたら、ヒャッハーな世相に合った大人に成長するでしょうね。
現在のソマリア人の大人を皆殺しにでもして、ソマリア人の子供たちをしっかりと農業、工業ができるよう教育すれば、ちゃんとした産業国家になるでしょう。個体性能はべつに低いわけでは無いので。子供たちが平和的な産業社会を築こうにも、親たちの世代が作った現実社会にそぐわないから、何時まで経ってもヒャッハーなままだ、ということでしょう。数百年かけて変えていくものです。

中南米の場合、パナマ地峡や南部アマゾンの険しい地形のために、マヤ、アステカなどの文明間の交流が阻害され、発展速度が遅くなってしまったってのが一つ。
次に、家畜化できる野生種が少なかったってのが致命的だったという話。家畜との関わりで病原菌耐性が高くなった欧米人と接触した段階で、伝染病により社会基盤が崩壊するほどの死者を出したって話ですね。例として北米原住民が社会的に大きく成長しようとした矢先にスペイン人と接触し、人口の9割を疫病で失ったという話が載ってました。

チーズケーキ。
先日しっとりミルクレープを試してみたんですが、二度と買わないと思う程度には開け難かったです(爆)

.. 2014年06月06日 09:04   No.817006
++ つかじ       
>アフリカ
アフリカは、個人的に正直な感想としては迷惑集団位にしか思えていない。支援しても破壊される・また支援する・破壊されるの繰り返し。
当人達が本当に心の底から「現状脱却」を図っていると言う思いが伝わってこないのです。
(そりゃ、頑張ってる政治家や教育者は沢山居るんだろうけど。)

>中南米
あ〜なるほどね。文明間の阻害か。映像や写真で見るだけでも、あれだけ険しければ当然かも?

>病気の持ち込み
これは米国側でもありましたよね。インディアンに病気の耐性が無いから、一気に広まってしまい、幾つかの部族が全滅してしまったって話し。

後、戦争中にそれを利用しての天然痘の感染なんてものもありましたね?
少し話し逸れるけど、インディアンとの関係見ても、最初から友好が無かった訳じゃないのが興味深い。双方の文化の違いがあそこまで拗れた部分があるのが、やはり異文化交流の難しさも表していると思う。

>ミルクレープ
こっちの地元では、早々に販売されなくなって凄く寂しい。美味しいのに。でも、開け難さは凄くよく分かるw

.. 2014年06月10日 19:18   No.817007
++ 多足       
アフリカへの支援。
自分も正直なところでは、実にならない支援には反対ですねえ。ワクチンどうこうすら反対だったり。
実際、アフリカ社会を一気に先進化しようと思えば非現実的、非人道的な手法を使うしか無いと思ってます。半植民地化して箱を作ってしまい、現行世代を排除し新しい世代を箱の中で育てるとか。でもコストが莫大だし、非人道的との非難を受けるだろうし。
一人の人間に染みついた常識を拭い去るのも多大な労力が必要なのに、現行社会全体を引き連れて彼らを変革するなんて、無理な話です。世代交代をしながら長期的な視野で漸進するしかないでしょう。だから、それに向いた支援の仕方が必要。

文明の接触。
接触初期の、少数によるものならまだマシな例もたくさんあるんですけどねー。集団規模で接触した場合、どうしても牌が不足するんで取り合いになっちゃう。
結局のところ、その土地が定員オーバーになっちゃうから戦争になってるんだと思います。その際に病原菌というものが大きな威力を発揮した歴史が、アメリカ大陸先住民の激減という形で現れたんでしょうねえ。

.. 2014年06月12日 09:01   No.817008


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