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このところパッとしない映像を「わー綺麗!」「感動的!」って必死でヨイショするばっかりだったり、偏った私見入りまくりの歴史ドキュメンタリーだったり、特定組織への配慮しまくって浅い考察しか出来てなかったりでなんか散々、というかレベルが下がってると言わざるを得ないNHKスペシャル。 しかし、この前の日曜に放送された「知られざる大英博物館 第二集:古代ギリシャ〜白い文明の真実」はかなり面白かったです。特にラスト20分くらいは。 古代ギリシャってーとパルテノン神殿とかマッチョな裸身彫像が「真っ白」なイメージ。 ところが、これが18〜19世紀の西欧における見栄というかハッタリというか、とにかくその当時の世相の都合で作られたイメージだった、って話。 今に残る白い彫像に紫外線やらなんやら当てて解析すると、実に色鮮やかなものだったことが判るそうです。 彫像の目の色は碧く、衣服には動物などの模様が描かれ、たいそう派手だったことが判ってきたそうです。 で、この色彩なんだけど、なんせ紀元前のモノなんで劣化して剥がれていって今みたいに白くなった… というわけでは無いそうです。 なんと、19世紀の大英博物館の学芸員の手によって削り落とされ、今見たく白くなったとか。さんざん「人類の遺産の保護」って言ってる博物館自身の手によって、遺産は破壊されたそうな。 なんでそうなったかと言うと、平たく言ってしまえば「白い彫像の方が受けが良いから」。博物館のスポンサーが、白くするよう指示したそうです。 その背景には産業革命を成し遂げた白人たちが、有色人種の歴史の長さに対して正当性を得るためとかなんとか。
実に興味深い話です。 結局、各学会で様々な説が出るわけですが、研究員たちは資金がないと活動できない。特に実生活に直結しない分野だとの問題は深刻ですよね。 発掘は金がかかるけど、アタリを引けないと金にならないわけで。 研究続けるためにはスポンサーが必要なわけです。 で、スポンサーはぶっちゃけ自分の好みの結果が欲しいわけです。 さらに、新事実が発表されても、それが面白くなかったら世間には広まらない。誤った説でも、面白ければそれが「事実」として広まっていくわけです。
例えば恐竜。 ティラノサウルスは実は走るのが苦手で、狩りもまともに出来ず、死肉をあさるという生態だった、って説があります。 これが仮に事実だったとしても、世間にはその説は広まらないでしょう。ジュラシックパーク的な、凄いスピードで追っかけてくる迫力ある恐ろしい生き物、ってイメージがあまりにも一般受けしてしまってるので。 …ギャラリーフェイクでこんな話あったな。
まあ実際どうだったか、ってのはタイムマシンでも無い限り判らないし、あっても判らないと思うんだけど、 理論的な妥当性がどれだけあるか、てのが重要になってくるわけです。 いくら理論的に妥当な説でも、面白みが無ければ、世相が求めていなければ、それは真実にならない。 稚拙な考察結果、デタラメな測定結果であっても、面白い説ならば、それが「真実」になってしまう。 結局声が大きいモノ勝ちになってしまうってのがね、滑稽だし面白いし、腹立たしくもある。 こういうのも「歴史」てものの楽しみ方の一つなんかなー、と思います。
.. 2012年07月03日 08:14 No.786001
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