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■--普天間基地を沖縄県外に持っていけない理由
++ 多足          

というわけで、沖縄に集中する米軍基地の問題について、です。
この話をする上での前提条件、まず1つ目。「単一兵科では作戦の実施が不可能」ということ。純軍事的な話ですが、これはすぐにご理解いただけるかと。
つまり、強力な戦闘力を持つ歩兵「だけ」では戦えない。少なくともその歩兵を戦場に輸送する手段が必要。歩兵の行動を支援するための砲兵、戦車などの直協支援車両も必要、補給部隊も必要。
高速性と高い攻撃力を持つ戦闘機部隊だけでは、攻撃目標に素早くたどり着き打撃を与えることは出来ても、その打撃力は一過性のものであり制圧を続けるには他の兵科が必要。
様々な任務の兵科が集まった組織、それが軍隊。である以上、「基地」ってものが有効な作戦能力を持つ規模で存在するには、結構な広さの土地が必要であり、さらにその基地を防衛する能力まで考えると複数の兵科の基地が特定の地域に一そろい存在するのが望ましい。ここまではOKでしょうか?
例えば、青森県に強力な歩兵部隊がいる。その部隊を朝鮮半島での作戦に使いたい。しかし歩兵部隊を輸送する輸送機が運用できる空港が、名古屋にしかなかったとする。もしそうなら、青森の歩兵は朝鮮半島への展開能力が無いってことになりますよね? 青森に空港があれば、つまり歩兵部隊とそれを輸送する部隊が近所なら、その歩兵部隊は緊急時の展開能力が非常に高い、ということです。すぐに遠くに行って作戦に従事できるわけです。
.. 2010年06月22日 17:55   No.697001

++ 多足       
さて、条件その2。
「軍事基地は場所を選ぶ」ということ。
これもかなり単純な話です。探知距離200kmのレーダーサイトを設置して、東京上空に接近する航空機を見張る基地を作るとします。ところがそのレーダーサイトを、東京から500kmは離れた仙台に設置しても、意味は無いですよね?
作戦半径500kmの戦闘機があったとして、そいつを運用する前提条件が「樺太に上陸する味方部隊を援護する」だとします。ところがその戦闘機を配備する基地が大阪にあったとしたら。樺太での作戦にはとても使えませんよね? 樺太を攻撃できる位置に基地を設置する必要があります。基地が旭川にあれば、十分に予定の任務を実行できるでしょう。

.. 2010年06月22日 18:05   No.697002
++ 多足       
さて、以上二点から、沖縄の海兵隊のことを考えて見ましょう。沖縄にいる海兵隊の任務は様々ですが、その重要任務の一つに「台湾有事への即応」というものがあります。
いまさら中国人民解放軍が台湾海峡を越えて大挙台湾に上陸、ということは考え難い話ですが、中国海軍はその能力を持ちつつあります。
それよりも現実的な話として、空挺部隊で高雄を攻撃し、台湾政府中枢を制圧する能力が今の人民解放軍にはある、と言っていいでしょう。補給とかの問題は出るでしょうが、台湾政府にとって大変な脅威です。
このような事態になった際、沖縄の海兵隊の先遣部隊は直ちにヘリで台湾に向かい、台湾政府を援護するべく人民解放軍と戦うわけです。
空挺攻撃による政府中枢の制圧、というものへの反撃は、ただちに行われないといけない、というのはお分かり頂けるでしょうか?
援軍を直ちに送る手段、それがヘリによる空輸です。米海兵隊が、ヘリ部隊と海兵隊地上部隊を別の場所に置きたくない、というのはこういうことです。
さて、台湾を支援するための海兵隊先遣部隊を輸送する機体は何なのか。それがCH-53E「スーパースタリオン。戦闘装備での航続距離は約1000km、作戦行動半径は300km〜500kmと言われています。
で、↓の図を見てください。
ttp://mltr.ganriki.net/faq38u13f.jpg
これは普天間基地からの距離を示したものです。海兵隊は台湾有事の際、普天間より台湾に近い下地島の空港を接収し、普天間からヘリで海兵隊を台湾に派遣、ヘリは帰りに下地島に寄って給油するそうです。これにより海兵隊は直ちに台湾の救援に行けるのです。
普天間基地の移転先の条件として米軍が「普天間からあんまし遠くになるのは困るよ」って言ってたのは、こういう背景があるからです。徳之島だとギリギリムリなんですよ。

.. 2010年06月22日 18:23   No.697003
++ 多足       
さて、台湾有事と海兵隊に関して、今度は港の話。
ヘリで先遣部隊を送るといっても、所詮はヘリで運ばれる部隊。重火器が少ないのは当たり前。戦車なんかは当然ヘリでは運べません。ヘリで運べる装甲車や砲兵もありますが、能力的に限界があるのは当然です。主力部隊は揚陸艦によって輸送されるわけです。
先遣部隊をヘリで運ぶ話と同様に、主力部隊を艦艇で運ぶために、海兵隊基地の近くに、揚陸艦を運用できるレベルの港が必要なわけです。
じゃあ先遣部隊と主力部隊を分けて配置したら? という話が出るかもしれませんが、それじゃあ他の任務の時に不便ですよね。「台湾有事専門の部隊」が有るのではなく、「台湾有事にも、他の任務にも対応できる部隊」が有るのですから。

.. 2010年06月22日 18:30   No.697004
++ 多足       
さて、台湾を護るための米軍基地がなんで日本にあるのよ、という話。だって日本を護る基地じゃないよね?
これは結局のところ、アメリカの都合ではあるんだけども日本にとっても都合の良い話なのです。日米安全保障条約は、「日本が他国から攻撃受けたら米軍が参戦する、しかしアメリカが攻撃受けても自衛隊は何もしなくてもいい」という、日本にとってかなりお得な条約なわけです。片務的な軍事同盟ってヤツですね。…厳密な話は置いておきますが。
平たく言ってしまえば、そんな(日本にとって)虫のいい条約をアメリカが合意するほど、日本という国の立地条件が良い、ということです。
そして沖縄の立地条件が、米国の国家戦略にとって非常に有意義な位置にある。これが沖縄に基地の集中する最大の要件でしょう。

.. 2010年06月22日 18:41   No.697005
++ 多足       
では沖縄にある基地を、日本国内の他の場所に持っていけないものか? という話。
この話を考える上での前提条件、つまり条件その3。
日本は広いって話。細長く広い国土を持つ日本において、沖縄と北海道に「同じ目的」の基地を作ることは不可能です。台湾有事に対応できる場所、半島有事に対応できる場所、ソ連軍の強襲に対応できる場所。それらの場所は日本国内に存在しますが、全て違う場所なのです。
技術の発達により航空機が高速化し、ミサイルの射程も長くなっていますが、現実問題としての地理的な距離はあいかわらず大きな問題として存在し続けるのです。SFな技術でもない限り。

.. 2010年06月22日 18:47   No.697006
++ 多足       
さて、大阪府の橋本知事の発言に関して、です。橋本氏は、条件3を理解した上で「どうせ大阪に来るわけ無いから、協力する姿勢だけ見せて良いカッコしよう」と考えているのではないか、と思えて仕方が無いのです。条件2、3は非常に単純な話でして、それを踏まえれば容易にできる発言です。
また、全国知事会での鳩山元首相の「とにかく協力してよ」という、具体性の皆無な発言は、ここで上げた条件を三つとも鳩山氏が理解していない証拠でもあります。他の都道府県知事としても、こんな具体性の無い話で悪者扱いされても困るでしょう。

.. 2010年06月22日 18:56   No.697007
++ 多足       
沖縄に基地が集中し、負担を強いている。この状況をどう改善するか。自分の考え方では、沖縄に米軍基地が集中するのは必然なのです。ならば、負担軽減は基地の移転以外の方法で考える必要があると思います。
以前ナナシ氏が指摘したように、「札束で顔を叩いて黙らせる」ではなく、「沖縄を尊重した建設的な支援」を行う必要があるでしょう。でないと沖縄県民が納得するわけが無い。
また、米兵による犯罪に関して。これは日米地位協定の不備を是正する。当然のことです。誤用悪用は法で律する。それを成さなければならない。それが成されていないから、例のNHK特集の人が苦悩し続けたのではないでしょうか。

最後に、この話の前提条件の4として。「中国共産党が脅威か否か」。自分は、とても大きな脅威だと感じています。それは今の中華人民共和国の大きさを見れば一目瞭然。本来の中国って範囲じゃ無いでしょ。
チベット、ウイグルを見れば、「アメリカと中国、どっちがいい?」って話は論じるまでも無いレベルです。去勢なんかされたくねーよ。

.. 2010年06月22日 19:08   No.697008
++ カン       
丁寧な状況分析、ありがとうございます。
とりあえず、自己弁護からはじめたいと思います(笑)

普天間基地移設についてですが(ずっと前にこちらに書かせていただいた通り)自分は現行案(沿岸部埋め立て)に落ち着くだろうと思っていました。鳩山元首相も結局現行案に戻りましたが、落ち着くのではなく飛び越えて(落ちて?)行ってしまいました(笑)
元々県外とか国外とかは(できれば良いなとは思いますが)無理だろうという立場でした。今日のM新聞夕刊に在沖縄ミュージシャンの「普天間は現行案で受け入れて、その後基地を少しずつなくすように考えるしか無い」との意見が載っていたんですが、自分も賛成です。
職場の同僚の意見では、沖縄の土木業者には埋め立ての技術力が無いから内陸案になるのでは、とのことでしたが、そうなってくれれば良いな、と考えています。M新聞に鳩山元首相のヘリ訓練に護衛艦「ひゅうが」使用案なるものが載っていましたが、それぐらいのトンデモ発想でも自分は賛成したいです。オブイェクトさんは自分もチェックさせていただいていますが、管理人様も推していたメガフロート案でも良いと思っています。

国外に不安要素がある以上、米軍に即撤退してもらいたい訳でもありません。地位協定なんてものが無ければ、いつまでいてくれたって良いです。ただ沖縄に集中している現状は、沖縄県民がそれを望む以上、検討しなければ不公平だと思うのです。即応部隊は置かざるを得ないにせよ、なんとか一部でも他県も負担するべきでしょう。ちなみに、理由無く海無し県にまで負担を求めるつもりはありません。茨城に来るのは、自分は賛成です。これも以前書き込ませていただいたんですが、どうせ茨城空港なんて今後閑古鳥が飛ぶんだから、米軍機が飛んだ方がマシだと思っています。

中国の脅威は、自分も当然認識しているつもりです。ただ、今後衰退して行く見込みの塞外民族としては、うまく立ち回る必要はあると思っています。また、一人っ子政策を行なった中国は、急速に高齢化社会を迎えるだろうと読んだ事があります。覇権は長くないのではないかと(自分が生きている間は栄えているんでしょうけど)。

とりあえず以上です。(誤字を修正しました(泣)情けない…)

.. 2010年06月23日 21:43   No.697009
++ 多足       
「丁寧な」というかなんというか、改めて読み返して我ながら「簡潔」とは程遠い文章だなあ、と苦笑するしかないのですw
例えもなんか微妙だし、文章力、説明能力をもっと高めないといけないなあ…

で、沖縄基地。
とりあえず「原稿案で行きます」と言うだけ言って責任者が逃げちゃったんで、このまま八月末に結論が出せるとは到底思えないんですよ。なので自分の予想はやっぱり「普天間に固定」、です。
メガフロートはちょっと難しいんじゃないかなあ。実例が無いし、それこそ技術的に本土の造船業にしか金が行かなくて沖縄経済に益が無いし、構造的な不安(台風やテロに対する耐性)もあるし、政治的な不安もあるし。「でっかい空母じゃねーか!」って言われそうなんで。

地位協定ですが、これ自体は必要だと思ってます。なんせ他所の国の軍隊が駐留するんだから、何か起きたときの対処の根拠が必要ですから。問題はその内容ですね。見直しの必要があるとは思います。

で、基地の移転ですが…
あれだ、別スレ立てようw

.. 2010年06月24日 08:11   No.697010


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