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「冬の兵士 イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実」反戦イラク帰還兵の会、アーロン・グランツ著 岩波書店、について書かせてください。
2008年3月にメリーランド州の全米労働大学で行なわれた集会での証言をもとに2008年6月にアメリカで出版された本です。内容は…とにかく読んでいただければ、と思います。 第一章は、上からの指示で交戦規則が無くなったことが証言されています(2003年3月クウェートからイラクに:ジュネーブ条約を遵守して軍服着用者のみ攻撃(医療・宗教関係者を除く)→同月バグダード:近づいた者で(英語で)「立ち去れ」と言う指示に従わないものは撃って良し→2004年1月:殺されるべき者を殺し、救われるべき者を救うこと→2004年4月:黒のディシュダーシャ(民族衣装)を着て赤いスカーフを頭に巻いている者は敵対意思を示しているので撃って良し→路上にいるすべての人間を戦闘員とみなせ)。 シャベルや重そうな荷物を持ち運んでいる者も射殺して良いとの交戦規則が出て、誤って無関係の民間人を射殺した場合にシャベルや武器を「捨て置く」ことがあったとも証言されていました。 「情報を元に家屋を捜査する際、番地を間違えた」という話も複数ありました。民家をほとんどバラバラにしてから間違いに気づいたと。 中佐が乗ったハンヴィーが銃撃されたので、銃撃地点と思われるアパート群をスペクター対地攻撃機で破壊した、とか枚挙にいとまがありません。 他にも同じ米軍内の女性兵士に対するハラスメント、精神を病んだ退役兵士に対する無策、民間警備会社が兵士の何倍もの給料をもらってやりた放題、etc…
数々の証言にもショックを受けましたが、なぜ非人間的な行為が行なわれるかについての考察があり、そちらにも衝撃を受けました。フルメタでおなじみの新兵に対する罵倒、あれは50年くらいの歴史しか無いそうです。S.L.Aマーシャル陸軍准将が第二次大戦の帰還兵を精査、出版した本を元にしたプログラムだとか。准将の調査によれば、兵士100人中15〜20人しか発砲していなかった、「平均的で健康な個人は」「同じ人間を殺すという行為に対して、通常では自覚されない内面的抵抗があり、責任を回避できるならば、自らの意思で人の命を奪おうとはしない。…生死がかかる状況において(兵士は)良心的兵役拒否者となる」。全軍でプログラムが改良された結果、ベトナムでは90%の兵士が戦闘中に発砲したとのことです…
アメリカ軍上層部が自分たちの都合の良いように兵士を作り、都合の良いように運用する構図が、この本を読むまでは見えていませんでした。他国の、この化け物じみた現実に対してどう立ち向かったら良いんでしょうか…無力感に襲われています。
.. 2009年11月23日 12:15 No.627001
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